田子薬師として親しまれている唐様建築。
常福院(じょうふくいん)は会津坂下町の南側に位置する県道22号線沿いにある。一帯が水田地帯で交通量が少ないこの道は、西側に裏磐梯の山々が良く見える気持ちがいいドライブができる道路だ。
国道49号線から向い、磐越道の下をくぐってしばらくすると右にこんもりとした森が見えてきて道がゆったりとカーブしている。カーブが終わると左右に「田子薬師堂」の看板が見える。
薄暗いそこに薬師堂がひっそりとある。
国重文化財という看板がなければ、よくある村のお寺と同じように見えるが屋根のデザインに気品を感じる。お堂は東向きに立っていて車を止めて向かうと心の準備がないままお堂と向き合うことになる。
短い参道は立木が黒い影を作り、その先のお堂は屋根の南側だけに陽が当たり銅ぶきの青黒い色が見える。その弱い光で色のない建物全体がぼんやりと浮かび上がっている。苔むした狛犬のところまで来るとしだいに建物全体がはっきりと姿を現す。
この建物は、唐様建築様式で屋根部分は入母屋造りで屋根先が大きく反り返って放射状に垂木が並ぶ扇垂木。桁行三間、梁間三間で正面に6枚の桟唐戸になっていて、組物は出三斗組の手の込んだ造りになっている。小さいながら気品ある堂々とした鎌倉中期の薬師堂である。
堂の裏、西側は木立がなく広々とした草地が広がり春には一面シロツメグサが敷き詰められ、お堂の陰と対象的な風景となっている。
田舎道の脇に隠れるように建つお堂は木立の影が濃くて寂しげに見えるがその気品で今もなお住民のより所となっている。
駐車場に戻り県道に出ようとすると、東に青空を背景に盆地を囲む山並みが霞んでいた。
[] 内容の一部は歴史春秋社:会津の寺を参照しています
この寺の縁起は、大同2年(807年)に空海が李の木で薬師仏を造ったとされています。その後、この地の長者だった田子重兵衞道宥がこの薬師仏を信仰し、建久8年(1197年)にこのお堂を建て近隣では「田子(たご)薬師」として慕われています。
この建物は、国の重要文化財に指定されており、昭和29年文部省の直轄工事として改修し昭和31年に復元されています。
唐様建築の特色をよく表した室町中期の建築物で、桁行三間、梁間三間の大きさです。
[] ※参考:歴史春秋社刊「会津の寺」
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Basic information
- ■開山:空海 大同二年 807年
- ■宗派:真言宗(無住職)
- ■本尊:薬師如来
- 日光菩薩・月光菩薩
- ■建物:薬師堂(国指定重要文化財)のみ
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常福院